健康に役立つ 栄養学コラム 今回の授業のポイント スマホの使いすぎには要注意 ビタミン類を十分にとる食生活を マッサージと食生活改善の組み合わせが重要

女性の肩こり―それは「鉄」が足りないせいかも知れません

なぜ? 体内の鉄が不足すると肩がこる理由

肩こりは男女を問わず、日本人の多くが経験する症状ですが、特に女性にとっては悩ましい問題です。なぜなら女性には、肩こりの原因となる、女性特有の事情があるからです。

肩こりの原因は、長時間の同じ姿勢や運動不足、ストレスがよく知られていますが、ある栄養素がたりずに、肩こりになってしまうことは意外に知られていません。

その栄養素は、鉄です。女性には月経があり、定期的に子宮内膜がはがれて出血します。血液中の赤血球にはヘモグロビンという色素があり、体の隅々にまで酸素を運ぶという大切な役割を持っています。このヘモグロビンをつくる材料となっているのが鉄であり、月経のたびに、女性の体内からは鉄が失われるわけです。

血液中の鉄が少なくなると、ヘモグロビンがつくれなくなり、血液中のヘモグロビンの量はどんどん減っていきます。その結果、血液は全身の細胞が必要とするだけの酸素を運ぶことができなくなり、体内の組織は酸欠状態になります。これが「鉄欠乏」です。

鉄欠乏の状態になると、なぜ肩こりの症状が出るのでしょうか。血液中の鉄が減ってヘモグロビンの量が少なくなると、肩の筋肉も酸欠状態になり、疲労物質がたまって、肩こりの症状が表れます。20代~40代女性の貧血の大部分は鉄欠乏性貧血といわれており、女性の肩こりは、実は、鉄欠乏が原因になっている事が意外に多いのです。マッサージや入浴などで肩こりを改善しようとする方も少なくありませんが、鉄欠乏という根本原因を解決しない限り、肩こりの症状は繰り返されます。

レバーや赤身の魚を食べて、鉄欠乏を予防

それでは、鉄欠乏を予防するには、どうすればいいのでしょうか。厚生労働省のデータによると成人女性では1日あたり15~20mgの鉄が必要だとされています。そのため、まずは日ごろから、鉄の多い食事をとることが大切です。

鉄が豊富な食材としては、レバー(牛・豚・鶏)、赤身の肉類、赤身の魚(マグロ、カツオなど)、卵、大豆、ほうれん草などがあります。また、アサリやシジミ、カキなどの貝類にも多くの鉄が含まれています。

 造血作用があるビタミンB12・B6や葉酸を含む食材を加えれば、より一層の効果が見込めます。特に牛・豚のレバーには、鉄、ビタミンB12・B6、葉酸の全てが含まれ、鉄欠乏対策としては理想的な食材です。また、マグロやカツオには鉄とビタミンB12・B6の両方が含まれており、ビタミンB6は豚肉からもとることができます。ただし、食事だけで、常に必要な量の鉄がまかなえるとは限りません。そんな時は、鉄補給のため、サプリを利用するのも1つの方法です。

肩こりを悪化させる「糖質制限ダイエット」

近年、日本では、鉄欠乏に悩む女性が増えています。その原因の1つとして挙げられるのが、「過度のダイエット」の流行です。若い世代の女性は特に痩身願望が強く、ダイエットが常態化する傾向にあります。しかし、食事の量を減らせば、慢性的な栄養不足になり、必要な鉄を食事からとることができなくなってしまいます。

なかでも、近年ブームとなっている糖質制限ダイエットは、栄養学の観点から見て様々な問題をはらんでいます。糖質制限ダイエットは、炭水化物の摂取量を減らすことによって、体重や体脂肪の減少を目指すダイエット法です。このダイエット法では、カロリー不足を補うため、糖質に代えて脂質やタンパク質を多めにとることになります。その結果、血液がドロドロになって悪玉コレステロールが増え、動脈硬化や心筋梗塞、脳梗塞のリスクが高まります。もちろん、血管が傷つけば血行不良になるため、肩こりの症状も悪化していきます。

「バランスの良い食事」が美と健康のキーワード

糖質・脂質・タンパク質は、人間が生きていく上で欠かせない「3大栄養素」です。肩こりを予防し、健康な体をつくるためにも、この3大栄養素のバランスをとることがとても大切です。

そのためにも、日ごろから、できるだけ多くの種類の食品を摂るように心がけましょう。 米やパン、麺などの主食、タンパク質源となる肉、魚、卵、牛乳・乳製品、豆類の摂取を心がけるとよいでしょう。1週間単位で、どれくらいの種類の食品を食べているかチェックしてみてください。肉についても牛肉、豚肉、鶏肉など、いろいろな種類を食べるとよいです。

仕事が多忙で外食が多くなりがちな方は、ごはんにおかずを付けた和定食のメニューを選びましょう。日々の食事をできるだけ工夫し、もし必要な栄養が不足していると感じたら、できるだけ専門家に相談したうえで、その分はサプリで補う。それが、「美と健康」を手に入れるための、一番の近道といえるかもしれません